MALTリンパ腫とは

MALTとは、粘膜関連リンパ組織(mucosa-associated lymphoid tissue)のことで、唾液腺、消化管、気管支などの粘膜に存在するリンパ組織のことです。このMALTを母地に発生する低悪性度のリンパ腫を「MALTリンパ腫」と呼びます。

MALTリンパ腫は、慢性に持続する炎症を背景に発症することの多い病気です。病変部が比較的限定されているケースが多く、悪性度は低いとされています。これに対して悪性度の高いリンパ腫を「悪性リンパ腫」といい、病理組織で区別されます。そして、胃のMALTリンパ腫は、多くの場合その背景にピロリ菌感染による慢性胃炎が認められます。

1993年、ウォザーズプーンは、除菌治療によって胃MALTリンパ腫が退縮するという論文を医学雑誌『ランセット』で発表しました。そのあと、多くの研究者がこれを確認し、60~80%の胃MALTリンパ腫は除菌治療で改善され、治ってしまう場合があることが明らかになりました。現在では、胃MALTリンパ腫については、まず除菌治療がすすめられています。しかし、少数ながらピロリ菌感染のない胃MALTリンパ腫もあり、除菌治療に反応しない例もあります。

そのあと1999年には、日本の赤木らが胃MALTリンパ腫の一部でAPI2-MALTという遺伝子異常があることを解明しました。これは染色体間での「転座」という現象で起こる遺伝子異常で、この遺伝子異常がある場合には除菌治療が奏功しないことが判明したのです。一方、遺伝子異常がなくてピロリ菌感染がある例では、除菌が有効なケースが多いということがわかってきました。

胃MALTリンパ腫胃MALTリンパ腫の病態がさらに解明されれば、ピロリ菌の関与や除菌治療の適応の判断が、より確実にできるようになるでしょう。現状では、胃MALTリンパ腫は、胃潰瘍・十二指腸潰瘍と並んで、除菌治療がすすめられる疾患となっています。ピロリ菌が要請で、病変が粘膜下層までにとどまり、遺伝子異常がない例では、除菌で治る可能性が高いと考えられます。今後も医学的なデータを収集していく必要があります。

胃潰瘍、十二指腸潰瘍のほかに、除菌によって改善が期待される病気がいくつかあります。具体的には、胃の病気としては、内視鏡的治療を行った早期胃がんの術後、萎縮性胃炎、胃のポリープ(過形成ポリープないし炎症性ポリープ)について有効との報告があります。