社会脳の機能低下:心は前部帯状回にある


興味深いことに、人の脳は、モノを扱うときと、人を扱うときでは、一見同じことをしていても、働き方に大きな違いがあります。モノと人を明らかに区別して扱っています。では、脳は、モノと人をどう区別しているのかというと、心を持つ存在を人とみなし、そうでない存在をモノとみなしているのです。より正確には、相手が現実にものか人かということよりも、その人が、心を持つ存在として相手をとらえれば、それは人として扱われます。例えば、クマのぬいぐるみを見ても、それを、心を持った存在として対するときは、人と接するときと同じような回路が働きます。逆に、モノとしてみなせば、石ころや布きれを扱うときと同じような働き方をします。

人とモノの違いは、顔を持つか、持たないかだとも言いかえられます。顔は表情を持ち、人はそこに心が映し出されていると感じます。人の表情とモノの姿の違いは、そこに心や気持ちを読み取るかどうかということです。

心を扱うために特別に進化した脳の領域、つまり、気持ちを認識したり、推測したりするのに使われる脳の領域を「社会脳」と呼びます。社会能の代表的な領域は、扁桃体や内側前頭前野です。それ以外でも、眼窩前頭野、前部および後部帯状回、側頭・頭頂接合部、上側頭回、下前頭回、梨状葉顔領域などが含まれます。自閉症の人では、社会能の働きが全般に低下しています。人の顔を見て、その気持ちを推測させる課題を行うときも、社会能はあまり使われません。ただのものを見ている時と同じような働き方をしているのです。

自閉症スペクトラムの根本的な障害の一つとされている心の理論は、社会能の働きによりますが、その中でも、どの領域の働きによるのでしょうか。

相手の意図を推測する課題で、活発に使われる領域を機能的MRIで調べた研究では、心の理論の中枢が、内側前頭葉、とりわけ前部帯状回やその周辺領域にあることがわかりました。部検研究でも、前部帯状回は、構造的な異常が見つかっている領域の一つです。