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米国医療の光と闇:最先端のライフサイエンス研究と無保険者の急増

米国の医薬品産業が世界中からヒト・モノ・カネを吸い寄せる魅力は、日欧と比較して迅速な制度・技術革新があり、医薬品・バイオテクノロジー産業を国家戦略の一環として育成に注力しているためでしょう。

例えば、米国のライフサイエンス研究メッカであるNIHには、2012年に300億ドルの研究開発予算が投入されています。

これに対して、日本の科学技術予算全体に占めるライフサイエンス分野の予算は3000億円で、NIHの10分の1の規模にとどまっています。金額がすべてではないとはいえ、大砲と竹槍くらいの差があります。

財政が逼迫する日本には余裕がないこともありますが、優秀な日本人研究者はますます米国へ引き寄せられ、その成果は米国が独占してしまうことになります。イノベーションはお金だけから生まれるものではありませんが、やはり腹が減っては仕事で踏ん張りもきかないでしょう。

話を元に戻すと、米国ではNIHを中心とする政治・行政・医薬品産業間の協力関係はきわめて密接であるそうです。フェア・ディスクロージャー(情報の公正な開示)の精神が強い米国では、情報の共有度も高いとされています。ライフサイエンス分野における産学官の協力体制は、我々が考えている以上に強固であり、その底辺にはアカデミアからの活発な人材の供給があり、また産学官で自由に動けるアクセスフリーの米国はライフサイエンス研究に最適の環境とインフラがそろっています。

こうしたライフサイエンス研究の厚みを梃子にして、米国は様々な新薬開発で世界をリードするとともに、新薬が他国に先駆けて承認され発売される市場となっています。

米国は日欧とは異なり国民皆保険のような制度を持ちません。米国民は公的医療保険制度か民間医療保険に加入することになります。ただ近年問題となっているのは、どの保険にも加入していない無保険者の増加です。

現在、無保険者は4700万人。全人口の16%に上ると推測されています。こうした無保険者は適正な医療サービスを受けられないだけでなく、保険加入者の保険料の増加に跳ね返ることになります。

米国の医療サービスと保険料が高いことが根本的な問題であり、国民皆保険制度を導入しても解決するわけではありません。ライフサイエンス研究を米国医療の光の部分とすると、無保険者は陰の部分と言えるでしょう。