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ハードドラッグと大麻の関係について

キャンデルらは、親の振る舞いが薬物使用者の振る舞いを決める重要な要因になっていることを明らかにしています。親がアルコールやタバコを使用していると、このことが子供がこれらの薬物を試そうとする際に重大な意味合いを持つようになるのです。さらに驚くべきことに、親が医療上処方された精神安定剤(トランキライザー)を使用していると、子供が不法薬物を試す可能性が高くなるという結果が出ています。親たちは合法的な向精神薬を使用することで、知らず知らずのうちに心理的苦痛に対処するためには薬物が役立つということを子供たちに教える結果になっているのかもしれません。

マリファナの使用とマリファナより強いいわゆるハードドラッグとの間にある関係も、これと同じように社会的文脈の問題に過ぎないのでしょうか。オランダ人はこうした関係を、ハードドラッグをマリファナから切り離し、マリファナだけを自由化することによって断ち切ることができると考えています。しかしこれで問題は本当に解決するのでしょうか。あるいは「常用性理論」にも何らかの医学的な根拠があるのでしょうか。

この見方を裏付けるものと考えられたのは、化学的メッセンジャーであるドーパミンを使う、動物の脳内の神経経路でTHCが活性を引き起こす能力についてなされた基礎研究上の発見です。この発見に意義があるのは、これがアルコールやニコチン、コカイン、アンフェタミン、ヘロインといった中毒性のあるさまざまな中枢神経系用薬への反応にみられる一般的な特性だからです。一部の科学者はこれらの薬物の報償効果を引き起こすのが脳内の特定の中核領域でのドーパミンの放出であり、この結果使用者がもう一度同じ薬物を使いたくなるのだと考えています。まだこれではことの次第を単純に捉えすぎであり、ドーパミン放出を招く意義はこれがある重大な刺激に対して脳の注意をひきつけることにあり、これが同じ経験の反復を求める動物の動機づけを決定する助けになっているのではないか、と考えることもできます。さらにアルコールやニコチンがTHCと似たようなかたちでドーパミン放出を招くことから、これらもまたコカインやヘロイン、アンフェタミンへの玄関口的薬物とみなすべきだと考えることも可能でしょう。しかしTHCが実際に示した結果はもっと複雑で、ドーパミン放出をもたらすTHCの効果が脳内で自然発生オピオイドの放出を引き起こすTHCの能力に起因していることが明らかになっています。またカンナビノイド、オピオイドそれぞれによって引き起こされる依存症候群には一定の交錯がみられるようです。マリファナに依存する人が出てくるのは、その人が体内にある自然発生オピオイドに対して中毒状態になるからではないか考えることもできるでしょう。マリファナの使用には、同じアヘン剤受容体に作用するヘロイン様の物質を脳に探させる働きがあることも考えられます。

これらの発見は、考察を進める医学研究院に一息つくきっかけを与えてくれます。脳内でのTHCの働きに関わるメカニズムや、それがオピオイドのメカニズムと持ちうる関係に、新たな光を当てることになるからです。現在では脳の研究者は中枢神経系には内因性オピオイド系と内因性カンナビノイド系があり、両者がそれぞれ独立しながら、並列し一部重複する形で心理的規制システムを作り上げているものとみています。両者はともに痛覚の制御に関わり、脳内の報償メカニズムにも一定の関わりをもっている可能性があります。マリファナを摂取する主観的経験は、ヘロインなどのアヘン剤によって引き起こされるそれとは全く性格を異にしています。実験動物も両者を異なるものとしてとらえています。THCモルヒネのどちらかを区別す量に訓練された動物や、その区別を誤りなく行うことができるからです。また動物にTHCを投与することでヘロインの自己投与を促す結果になるという証拠は得られていません。

しかし脳内でのオピオイド、カンナビノイド両メカニズムのつながりを見る限り、THCは中枢神経系のドーパミン放出メカニズムを引き起こす他のどの向精神薬よりも、モルヒネやヘロインにある意味で近似性をもつように見えてくるのです。オピオイドのメカニズムへのこうしたつながりは、ドーパミンのメカニズムへのつながりよりも潜在的にははるかに意味があるものと思われます。