化膿連鎖球菌による連鎖球菌性毒素ショック様症候群

化膿連鎖球菌は咽頭炎とびひ、壊死性筋膜炎、筋肉炎、産褥熱、敗血症、および感染後の起こる非化膿性の3疾患、すなわち急性リウマチ熱、急性連鎖球菌性糸球体腎炎、結節紅斑を起こす病原菌です。

化膿連鎖球菌の粘膜への定着能力と組織への侵襲性は、主として菌の表面にあるM蛋白によって決められます。最近の重症例の原因菌の多くは、M1とM3など特定の血清型に属するM蛋白をもっています。一般に莢膜にあるヒアルロン酸の量が多いほど病原性が強いといわれています。M1とM3血清型に属する菌は大量のヒアルロン酸をつくるのが普通です。

化膿連鎖球菌は種々の外毒素を作ります。連鎖球菌性発熱性外毒素はその一つです。以前は発赤毒とかディック毒素と呼ばれていました。この外毒素を産生する株は一時は稀になっていましたが、病原性の増大を伴って再び現れ、復活しました。

連鎖球菌性毒素ショック様症候群

連鎖球菌性発熱性外毒素は、猩紅熱(Scarlet fever)の発熱や発疹の原因です。宿主の生体防御機能に変調をきたす強力な毒素作用があり、軟組織の化膿連鎖球菌感染症に伴って、発熱、発疹、表皮剥離、血圧低下、多臓器機能低下を特徴とする連鎖球菌性毒素ショック様症候群を起こします。それはスーパー抗原としての作用に一致します。ブドウ球菌性毒素ショック症候群に非常によく似た悪性の経過をとり、経過が急速でしばしば死亡します。致死率は30%近く、通常は血圧低下と呼吸不全で死亡します。救命のために早期に診断し、ペニシリン治療のみならず大がかりな外科手術が必要となることが多いです。

黄色ブドウ球菌の場合と異なって、化膿連鎖球菌による連鎖球菌性毒素ショック様症候群は敗血症を伴うことが多く、約60%に見られます。もう一つの特徴は、感染部位が明白に存在し、皮膚か軟組織の感染、しばしば壊死性筋膜炎が原因となることです。


化膿連鎖球菌が原因で起こる著明な全身症状を伴った非常に重症の軟組織感染症がよく見られるようになりました。米国各地で急性リウマチ熱が再び姿をあらわし、市民や軍人の間に集団発生が起こりました。そのあと、化膿連鎖球菌による新しい悪性の敗血症、ショック、多臓器不全を伴う症候群が確認されました。これは連鎖球菌性毒素ショック様症候群、略してTSLSと呼ばれます。化膿連鎖球菌がより強力な病原性を獲得しつつあります。

奇跡的と言ってもよいほど抗菌剤耐性菌が少なく、ペニシリンGですらいまだよく効く化膿連鎖球菌に起こったこの歴史の逆流を、どう考えればよいのでしょうか。