ドイツとイギリスの薬価制度

日本のように医薬品を銘柄別に価格規制している国はありません。しかし、各国とも何らかの方法で医薬品費を抑制する政策を実施しています。イギリスとドイツの規制を見てみましょう。

イギリスの規制はPPRS(pharmaceutical profitability regulation scheme)と呼ばれ、NHSの薬剤費を抑制するとともに、医薬品産業を育成する目的も併せ持っています。むしろ産業政策的意味合いが大きいとも考えられます。具体的には各製薬企業に国内事象からの利潤率に上限を設定して、その範囲内で販売価格を自由に設定できることとし、販売価格設定が拙く、利潤率の上限を超過した場合には、超過額を規制当局に返還させるという規制方法です。

PPRSに対しては利潤率上限設定が密室で行われ不透明であるという批判があります。反面、PPRSはNHS向けの利潤率以外は規制していないので、製薬企業は海外市場の開拓に向かうことになります。そして、中規模だったある製薬企業が短期間で世界2位にまっで成長した例が示すように、医薬品産業全体が輸出産業として発展しており、産業政策としての評価は高いです。

ドイツは長い間、薬局の購入価格に規制されたマージン率を付加する自由価格制でした。しかし、医療費に占める薬剤費割合が高く、包装単位に一部負担金を徴収するなどの薬剤費抑制策が実施されてきました。一部負担金でも薬剤費の高騰を抑制することはできず、90年代に参照価格制と薬剤費の予算制が導入されました。

参照価格(referene price)は、医薬品を主成分、薬理作用、薬効など薬学的な観点からグループ化し、同一グループには同一の保険給付価格を設定するという方式です。たとえば感冒薬グループにはA、B、Cの3品目が該当し、価格が50円、40円、30円であった場合、一定額を保険給付価格と定め、これ以下の価格である医薬品については全額を保険給付価格と定め、これ以下の価格である医薬品については超過額を患者自己負担とするというものです。この例でいえば、B、Cは全額保険給付で患者負担はゼロ、Aについては40円が保険給付であり10円は患者負担となります。

近年ドイツの薬剤費は抑制されていますが、それは時を同じくして導入された薬剤費予算性の効果によるもので、参照価格制による薬剤費抑制効果は疑問視されています。予算制は、医師・医療機関の年間処方量に上限を設け、上限を超えた処方を行った者には翌年の割り当てを削減するという方法で実施されてきました。

日本でも参照価格制度の導入が検討されましたが、各方面の反対により白紙撤回された経緯があります。経済学者による反論は、ドイツは参照価格の設定に当たって品質を客観的に評価したのに対し、日本では品質の差異を考慮していないこと、参照価格以下の医薬品価格が上昇し、医薬品価格が全体的に上昇することなどでした。