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欧米での自社販売:新大陸に上陸する日系製薬会社


 日本の基礎研究は薬学・化学分野に限らず出遅れている。医薬品の輸出入に限っていえば、完全なる入超であり、それは欧米で通用しない医薬品が開発されていたからともいえる。ただし日本の全産業中では医薬品がもっとも基礎研究の割合が高い。

 通産省がまとめた「平成12年版通商白書」によれば、99年の医薬品輸出入動向は次の通輸出額は対前年比26%増で24億ドル台を記録して、過去最高を更新した。輸入額も23%近くの伸びを示し46億ドル台に乗せた。しかし、差額22億ドルは相変わらすの入超だ。

 さて輸出の内容だが、24%を占めるのが抗生物質で数量ベースでは10・9%の伸びだが、ドルベースでは横ばいとなっている。ペニシリン類、ビタミン類は数量ともにダウンしたが、ビタミンCだけは増加。ただしドルペースは増加したが、円ペースでは減少している。

 医薬品の輸出市場としては、アメリカが医薬品全輸出(円ベース)の42・1%(前年35・8%)を占めた。次いでドイツ6・8%、フランス6・7%、ベルギー5・7%、イタリア3・5%の順となっている。抗生物質だけにしぼってみると、ベルギー20・9%(前年21・3%)、アメリカ20・8%(同20・9%)、次いでフランス12・5%、イタリア6・6%、プエルトリコ6・4%の順だ。

 99年の医薬品輸入額は46億143万ドル。95年の49億843万ドルに次ぐ記録となった。商品別では、抗生物質(バルク)が数量ペースで25・7%、ドルペースで25・7%の増加。ペニシリン類が減少したが、エリスロマイシン類は増加した。血清・ワクチンは数量、ドルペースでも微減。ホルモン製剤は数量ベース、ドルペースともに伸びた。ビタミン類(バルク)は円ペースでは、2・1%の微減だが、ビタミンAとE類は二桁の伸びだった。

 輸入先(円ペース)は、従来通り、アメリカ21・1%、ドイツ17・6%、イギリスト]・7%、スイス8・1%、デンマーク6・3%の順。抗生物質にしぼってみると、アメリカ50・2%、アイルランドB・2%、イタリア10・o%とシェアは変かっていない。ホルモン製剤はデンマークが45・6%を占め、次いでスウェーデンの16・3%となっている。

 無資源国・日本は貿易立国であることは間違いないし、今後も国の依って立つ経済的スタンスは変わらないはずだ。しかし(イテク産業の「医薬品」は、戦後から今日まで輸出が輸入を上回ったことがない。製薬企業の多くが「薬種商」出身であり、同族経営を長らく続けてきたから、といってしまえばそれまでだが、武田薬品のようにそれを乗り越えた企業もあるのだから、トップの意識改革の問題だろう。

 さかのぼって1985年(昭和60年)、アメリカは日本の市場を開放すべくMOSS協議(市場分野別協議)を提案してきた。日本の貿易黒字に業を煮やしたアメリカが突きつけた恫喝的要求分野に、医薬品が入っていたのである。当時厚生省事務次官だった吉村仁氏はこう憤慨したという。

 「医薬品、医療機器の分野で日本が圧倒的に輸出をして、貿易不均衡が生じておる、こういうことはありません。むしろ日本は、輸入をしておる枠が多いわけでありまして、もうちょっと輸出してくれんかいな、こういうのがいまの医薬品業界についての、われわれの要望というのに近いわけであります。圧倒的に、輸出入の統計をごらんになれば日本に不利、かてて加えてかなりのアメリカ企業もいろいろな形で日本の国内でもって活動をしておるわけでありまして、それらの生産額を加えるとすれば、貿易外、貿易のうえの収支の点でMOSS協議で問題にすること自体がおかしいのではないかと思います」(「吉村仁さん」ぎょうせい

 この時、協議の爼上にのばった分野は、「電気通信」「エレクトロニクス」「木材製品」、そして「医薬品・医療用機器」だった。いま振り返れば、アメリカの要求は、貿易上の黒字赤字ではなく、非関税障壁というべき医薬品流通の閉鎖性に対するものだったのである。

 医薬品の入超は相変わらず続いているが、外資系は「流通の壁」がなくなったことから、ほとんどが自社販売に切り替えた。それまでは日本の製薬企業の販売ルートに乗せて販売していたのである。

 翻って日本企業は、かつての外資系が日本でそうしたように、アメリカではアメリカの製薬企業、欧米では欧米の製薬企業の流通網を借りて販売しているのが現状だ。外資系と合弁でおそるおそる販売している企業もあるが、折半出資ならば半分の利益しか生まない。抱き合わせ販売ならばなお低マージンになる。

 ここにきて日本の製薬企業がアメリカでの自社販売に切り替える動きを見せているが、実力の伴っている武田薬品だけが、米アボット社との合弁会社TAPを子会社化して販売する目途がついている。「かなり強力な商品を持っていないと、立ち枯れてしまう」という関係者もおり、新大陸上陸はそう簡単ではない。