大正製薬の既存高認知製品活用戦略

 OTC市場で成長を遂げるには何か必要か。OTC市場を勝ち抜く術は果たして存在するのか。この疑問を解いていくためのヒントとして、これまでのOTCメーカーの成長戦略を見てみることにしよう。これまで、どのような戦略でOTCメーカーは戦ってきたのか。過去のOTC市場における代表的な成長戦略の例として、大正製薬の「既存高認知製品活用戦略」を取り上げ、見ていくことにする。既存高認知製品活用戦略とは、すでに消費者に広く認知された製品を武器にシリーズ化し、販売実績を伸ばしていくという戦略手法のことである。

 OTC市場の領域別構成を見てみよう。領域には、感冒薬、ドリンク剤、胃腸薬などがあるが、販売高の一番大きな領域が感冒薬である。この領域には、一般にかぜ薬などがあてはまる。次に販売高の大きな領域が、ドリンク剤市場である。そして、感冒薬、ドリンク剤というこれら2大マーケットにおける既存高認知製品活用戦略の代表的な事例として、パブロンシリーズ(感冒薬)、リポビタンシリーズ(ドリンク剤)に焦点をあててみることにしよう。

 かぜ薬パブロンシリーズ、ドリンク剤のリポビタンシリーズの売上高が、新たにシリーズ化された製品の投入とともに上昇してきていることがわかる。業界では一製品につき100億円売り上げればヒットといわれるなか、リポビタンシリーズの製品は、ピーク時に1000億円を超える売上高を誇っている。つまり、大正製薬のリポビタンシリースの例は、既存高認知製品活用戦略のベストプラクティスといえる。実は、多くの企業が、既存高認知製品活用戦略によってドリンク剤や感冒薬を中心に売上を伸ばし、OTC市場をここまで拡大させてきたのである。

 では、なぜ既存高認知製品活用戦略がOTC市場でこれはどうまく機能したのか。その理由を探るために、消費者がOTCを購入する際のニーズがどのようなものか見てみよう。2009年度ニールセン・カンパニーのアンケート調査によれば、消費者がOTCを購入する際に特に重視していることは「安全性」「効果」「価格」であることがわかる。

 次に、既存高認知製品活用戦略の特徴について考えてみよう。その特徴とは、前述したように、消費者からすでに広く認知された製品を武器にシリーズ化していく点にある。もともと、「パブロン」や「リポビタンドリンク」は高い知名度を誇り、効能に関しても世間に広く知れわたっていた。また、ひとつのブランドとしての地位を確立し、消費者は安全で信頼のおける製品であると認識していた。そのため、既存高認知製品の高い知名度を活用することでシリーズ化製品の「効能」を消費者にすばやく訴求できたのである。また、シリーズ化製品はシリーズ化の対象となる既存高認知製品のブランド利用が可能なため、ブランドから連想される「安全性」をすばやく消費者に訴求できる。

 既存高認知製品のシリーズ化を行うことで、消費者がOTC購入時に最も重視している「製品の効能と安全性」をすばやく消費者に訴求できた点が成功要因だったといえる。