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ブドウ球菌性熱傷様皮膚症候群やトキシック・ショック・シンドロームなど



 ブドウ球菌はグラム陽性の好気性菌で、ヒトの皮膚や粘膜面に常在している。熱や乾燥に耐え、床の上でも数週間にわたって生存しうる。黄色の色素をつくる黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)と、表皮ブドウ球菌

 (Staphylococcus epidermidis)を代表とするコアグラーゼ陰性ブドウ球菌とがある。菌体の侵入によって炎症性病巣をつくるほかに、産生毒素による皮膚病変(発疹、剥離)やショック症状など多彩な病態を引き起こす。表皮ブドウ球菌は、静脈留置針、中心静脈カテーテル、脳室シャント、外科的処置創などの感染の起炎菌となる。

 薬剤に対する耐性を獲得したもの(MRSAバンコマイシン低感受性MRSA、多剤耐性コアグラーゼ陰性ブドウ球菌)は必ずしも毒性が強いわけではないが、免疫能低下状態や侵襲の強い処置を行っている患者では致死的な病態を起こしうるので、院内感染対策の対象として重要である。伝染性膿疱疹(「とびひ」)

 当初は紅斑として出現するが、続いて菌が局所に放出する毒素によって表皮が剥離し、水疱形成がみられる。かゆみのために掻爬し、その手で他の部位に菌を運び、「飛び火」する。再燃しやすい。

2)ブドウ球菌性肺炎

 肺炎の起炎菌としては頻度は高くないが、肺膿瘍、膿胸を合併することがあり重症になりやすい。

3)骨髄炎・関節炎

 血行性に進入すると考えられている。局所に疼痛、発赤、熱感をともなうことがある。乳児では不機嫌、嘔吐、哺乳不良などの非特異的な症状が前面に出る。罹患部位を動かさなかったり、他動痛がみられればこれを疑う。

4)ブドウ球菌性熱傷様皮膚症候群(ssss:staphylococcal scaled skin syndrome、 Ritter病)

 菌体の産生する毒素により、広い範囲の皮膚の紅潮がみられる。発疹・発熱のほか圧痛のために不機嫌となる。口の周りや腋窩周囲に放射状の亀裂がみられることがある。膿性の眼脂をともなう。皮膚をこすると容易に剥離する(ニコルスキー現象)。敗血症や水分電解質の不均衡に注意する。

5)ブドウ球菌腸炎

 通常みられるのは菌体そのものではなく、毒素に汚染されたものを摂取して数時間以内に発症する[毒素型食中毒]である。嘔吐、下痢、粘血便がみられる。抗生物質長期使用者では菌体が消化管に定着して重症化し、血圧低下をきたす場合もある。

6)トキシック・ショック・シンドローム(toxic shock syndrome)

 菌体外毒素によって循環血液量の急激な減少が起こる病態。高熱、発疹、粘膜充血など川崎病の症状に似ているが、腹痛、筋肉痛、血圧低下などをともない、より重症感がある。タンポン使用中の女児では膣が感染巣になることがある。

 病巣から菌体を分離することが診断の条件である。咽頭や皮膚からの培養で分離されても、常在菌でもあるので起炎菌(病気を起こしている原因の菌)であるかどうかの判定が困難なことがある。皮膚表面の感染症である伝染性膿痂疹でも、ごく軽症の場合を除き、局所療法(抗生物質含有軟膏、イソジン消毒薬など)のほかに比較的長期の抗生物質投与が必要となる。深部感染の場合には、 CRPだけでなく赤沈の正常化傾向が得られるまで長期に抗生物質投与を続けることが多い。

 皮下膿瘍、関節炎、肺炎に膿胸を合併した場合には、抗生物質投与に加えて排膿のための切開・ドレナージが必要となる。また、カテーテルやシャン卜を挿入している症例では、これを除去しなければならないことも多い。

 抗生物質の選択は、病巣からの分離菌の薬剤感受性を確認しながら行う。分離菌の90%はペニシリンを分解する酵素をもっているので、この酵素に対して安定性のあるペニシリン系・セフェム系の薬剤を使用する。遺伝子変異によってこれらの薬剤が結合する蛋白に変化を起こして耐性となっているものや薬剤を排泄する機構が強力になり耐性となっているものでは治療に難渋する。バンコマイシンは腎毒性に注意しつつ血中濃度を測定しながら使用する。症例によってはミノマイシン、リファンピシン、クロラムフェニコールといった薬剤を用いることもある。

Oバイタルサイン、一般状態の変化を把握し、血圧低下などの全身状態の悪化の早期発見に努める。

院内感染を起こさないように、手洗いを初めとする感染制御法を実践する。