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自閉症児の鑑別診断と治療法


 自閉症(autism)は、 1943年に米国の児童精神医学者カナーにより報告された疾患である。 1960年代中ごろまでは、外界(人間、状況、事物)に対する反応性が欠如し、通常の情緒的かかわりができないコミュニケーション障害を中核とした病態と考えられ、療育の悪さや母子関係の障害による情緒障害とされていた。その後、リムランド、ラターなどの研究により、心因論から脳障害論へと病因論は移り、現在では広範性(全汎性)発達障害(PDD:pervasive developmental disorder)という概念に入れられるようになった。

 PDDは、脳器質障害による言語、感覚・知覚の異常と認知障害により、二次的に社会性や適応行動上の問題が起こり、対人相互交流行動の質的障害や多彩な発達上の歪み(distortion)を示す疾患と考えられている。

 自閉症の最大の特徴は、言語の問題である。子供によっては発語はほとんどみられないか、一度出てきた言葉が2~3歳ごろに消失したりする。コマーシャルの宣伝文句は流暢にしゃべれるが、日常会話ができない。だれかに話しかけられても同じ言葉でオウム返しをする。コミュニケーションのために言葉を使えない。そのほかの特徴として、利き手決定の遅れ、非右利きの頻度の高いことがあげられる。

 有病率は、欧米では1:万人あたり3。1~29人であり、わが国では1。1~21。1人、男女比も男児に頻発することは認められているが、その比率も2。6~10対1まで、報告によりばらつきが認められる。出生前、周産期、出生後の時期に様々な程度の脳機能障害をもたらす状況が発疱と関係あり、同じ障害を有する同胞の家族に頻度が高いという報告もある。

 神経内分泌の面から、ドーパミン系、セロトニン系、エンドルフィン系の神経系の関与が強く示唆されるという報告もある。脳幹および間脳の障害に、二次的に中枢辺縁系の障害が起こっていると考えられているが、はっきりした原因は不明である。また、自閉症児の約25%が、10歳を過ぎたころからてんかん発作を起こすといわれている。

 長期予後は、 IQ、社会性能力、言語能力の発達の程度により左右される。


1……診断

 自閉症の診断では、知的障害の有無は問わない。人見知りをしない、育てやすくおとなしい、指さしをしない、視線が合わない、喃語が少ない、あやしても笑わない、人に抱かれることを嫌うなどの異常が2歳半頃までに出現するときに本症を疑う。

 約半数の子供が5歳まで1語文も話せない、しゃべれるようになっても反響語や言語新作などの異常を示す場合が多い。自閉症児は、乳児期および早期幼児期に、周囲の人の呼びかけにも反応せず、相手と視線を合わせようともしない。人見知りをしない、オツムテンテン、ニギュギバー、バイバイなどの身振り動作の模倣をしない。また、相手に感情を伝えようともしないし、相手の感情にも合わせようとしない。回りの人と一緒に協力しながら仕事をすることができない。視線が合わない、ごっこ遊びができない、感覚遊びをする(車などのおもちゃを走らせるという本来の遊び方ではなく、感覚的にいじっている)。文字や数字は読めるが、文字の意味や数の概念が理解できない。常同行動、物へのこだわり、儀式的な固執行動がm止されると、激しい怒り、興奮の混乱、動転といった状態に陥る。興味の隔たり、周囲を無視した行動など発達障害を認めるが、一般的には運動発達は正常であり、発達にきわめて顕著な凹凸が認められる。

 対人関係や社会性の障害、言語やコミュニケーションの障害、興味の限局性や常同的・執着的行動の3つの発達障害や行動異常が特徴的であるが、DSM-IVICD-10 、 CARS (Childhood Austism Rating Scale)の『小児自閉症』の診断基準がある。


鑑別診断

 精神遅滞(精神薄弱)、幼児共生精神病、不統合〈解体性〉精神病(ヘラー氏病)、脆弱X症候群などがあげられる。


2……治療

1)総論

 障害の本体を解決するような決定的な治療法はない。正常な発達を促進すること、硬直性と固定化を軽減すること、不適切な行動を排除すること、家族の苦悩を緩和すること、を目標として治療を行うことが多い。しかし、自閉症といっても、低機能自閉症から高機能自閉症まで、各症例により能力や個性が違う。自閉症と診断されたら、画一的な理解や治療をしないで、治療や教育のための個別評価がなされなければならない。

 一般診断用、治療的学習用の評価には、 CLAC (Check List of Austic Children)、 PEP (Psychoeducational Profile)が便利である。評価に基づき、生活や学習環境を構造化し、日常生活のルーチンプログラムを確立し、それぞれに適合した環境や状況を用意し続けることを基本に療育を行う。以前は、心を癒す目的で心理療法に重点が置かれていたが、最近では、脳に何らかの障害があるという観点から、生活を送るための技術習得を中心とした訓練指導が中心となり、それに心理療法を補助的に行う形に変わってきている。

 治療法の代表的なものとして、 TEACCH (Treatment and Education ofAutistic and related Communication handicapped CHildren)プログラムがあるが、くわしくは参考文献を参照にしてほしい。小児科のみでは充分な対応ができない場合が多く、その上うな時は関係諸機関と連携をとる必要がある。


2)治療法

 ①遊戯療法(ほとんど効果はない)
 ②行動療法(オペラント条件付けによる行動療法が、ある程度効果をおさめている)
 ③薬物療法自閉症の治療の中心になるものではない)

  激しい攻撃的行動のある場合にはプチロフェノン系の薬剤が、多動、反応性、注意集中能力、易刺激性などの改善には、ハロペリドールセレネース)少量投与(0。01~0。05 mg/kg)が有効と考えられて使われることが多い。

  約15%に痙攣発作を合併するので、抗痙攣剤による治療が必要となる。

④家族療法(家族への疾患の説明と援助)

 自閉症の子供をもつ母親は、ほかの子供をもつ母親となんら差はなく、むしろ、より育てにくい子供をもっているという点で、専門家の強力なサポートを必要としている。両親が子供の障害を正しく受け止め、不要な自責感をもたないように、発達障害であることをよく説明し、適切な療育訓練を享受させる。

⑤療育キャンプ療法

⑥感覚運動統合訓練

  I。皮膚知覚と身体イメージを形成する訓練、 II。全身運動、m。感覚・知覚と運動の協応訓練を通し視覚や聴覚などの感覚と上下肢や全身の運動の統合をはかる訓練。

⑦統合保育

  障害児だけの集団では、言語刺激、遊びの創造性、活動性などの点で限界があるため、言語や社会|生情緒の発達を促進するため、健常児との交流保育の重要性が認識されてきている。最近は統合教育が盛んなため、自閉症の子供も普通学級に通わせることが積極的に推し進められている。初期の段階では逆統合が効果的である。しかし、学校側の受け入れ体制を充分に考慮する必要があることはいうまでもない。

⑧言語治療

 自閉症児に治療的教育的な手段で言語を習得させる事は、きわめて困難である。自然の発達の中で言語を習得させることが大切である。