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筋ジストロフィー(デュシェンヌ型、ベッカー型、肢帯型、福山型など):カプトプリルなどのACE阻害剤が有効


 進行性筋ジストロフィーは進行性の筋力低下を起こす疾患で、病理学的には骨格筋の変性と壊死がある。以下に代表的な疾患について述べる。


1)デュシェンヌ型筋ジストロフィー

 もっとも頻度が高く、しかも重症である。X染色体劣性遺伝で男子に発症するが、女性保因者も時に発症する。ジストロフィン遺伝子の異常によりジストロフィンが欠損し、筋細胞崩壊が起こる。いったん歩き始めたあとに歩行障害が起こる。立ち上がる時に膝に手を当て、自分の体をよじ登る動作をとる(登はん性起立)。ふくらはぎが太くなり(仮性肥大)、運動後に疼痛をともなう。5歳ごろに運動機能のピークを過ぎ、10歳ごろに歩行不能となる。関節拘縮はまず足関節にみられ(尖足)、次に膝や股に及ぶ。脊柱側弯も起こる。10代後半に呼吸筋力の低下により呼吸不全になる。心筋障害は、早い場合は10歳ごろより明らかで、急速に進行すれば致命的となる。軽度精神遅滞を合併することもある。血清クレアチニンキナーゼ(CK=CPK)値は数百から一千倍程度に増加する。

2)ベッカー型筋ジストロフィー

 デュシェンヌ型と同様にジストロフィン遺伝子に異常があるが、ジストロフィンが不完全に存在し症状は軽い。5~15歳に発症し、筋力低下の進行はゆるやかで20~30歳に歩行不能となる。血清CK値は数百倍まで増加する。

3)顔面・肩甲・上腕型筋ジストロフィー

 常染色体優性遺伝形式をとり、通常学童期以降に顔面から上腕に比較的限局される筋力低下で発症する。口笛が吹けず、ストローで飲めない。上肢挙上困難が生じるが、一般に進行はゆるやかである。重症では下肢へ筋力低下が及ぶ。時に難聴と眼底血管の異常をともなう。血清CK値は5~6倍程度まで上昇する。

4)肢帯型筋ジストロフィー

 上述の3病型以外で、近位筋優位の筋力低下をきたす疾患群を指す。大部分は常染色体劣性だが、常染色体優性をとるものもある。発症時期は小児期から成人まで幅広く、筋力低下はゆるやかに進行し、血清CK値は10数倍程度まで上昇する。顔面筋罹患はなく、心筋障害は起こりにくい。常染色体劣性の本症の一部に、サルコグリカンというタンパク質が欠損するタイプがあり、症状はデュシェンヌ型と似て重症で、従来わが国では悪性肢帯型と呼ばれた。

5)福山型先天性筋ジストロフィー

 発症が満1歳以前の場合を先天性筋ジストロフィーと呼び、その中で中枢神経症状をともなうものを指す。わが国ではデュシェンヌ型についで多いが、海外では少ない。常染色体劣性遺伝形式をとる。乳児期より筋緊張低下と筋力低下があり、通常は歩行を獲得しない。顔面筋罹患があり、関節拘縮は早期より認める。精神発達遅滞は必発で、てんかんを半数に合併する。血清CK値は数十倍から数百倍に増加する。大脳厚脳回や小脳小多脳回などの中枢神経系奇形を合併し、大脳白質病変も認める。

6)非福山型先天性筋ジストロフィー

 福山型以外の先天性筋ジストロフィーを指す。顔面筋罹患は軽度で、CK値は数十倍まで増加する。細胞膜周囲の基底膜蛋白のメロシン欠損の有無によりメロシン欠損型とメロシン陽性型に分ける。わが国ではほとんどが後者で、これはゆるやかに進行し、心筋障害は少ない。

7)先天性筋緊張性ジストロフィー

 筋緊張性ジストロフィーは通常10~30歳で発症するが、乳児期に発症する場合がある。筋緊張低下と発達遅滞が特徴で、筋緊張(ミオトニア)は学童期以降に明らかとなる。ほとんどの場合、患者の母親が筋緊張性ジストロフィーである。

1……診断

 筋ジストロフィーでは筋力低下は全身性かつ近位筋優位で、ゆるやかに発症し、腱反射はほとんどの場合消失する。乳児期発症で精神発達遅延があれば、福山型か先天性筋緊張性ジストロフィーを疑う。前者では早期に関節拘縮をきたすことが多い。母親にミオトニアを認めれば後者を考える。顔面筋罹患があれば先天性ミオパチーも疑う。舌や手指の線維束攣縮があれば脊髄性筋萎縮症など神経原性疾患を疑う。筋電図は神経原性疾患との繿別に有用である。高乳酸血症があればミトコンドリア病を疑う。筋炎や代謝性筋疾患の一部(筋型カルチニン欠乏症)では有効な治療方法があるので、鑑別が必要である。診断確定のために原則として筋生検を行う、しかし、遺伝子診断や家族歴などで診断が確実な場合は例外的に省略できる。

2……治療

 筋力低下の進行を防ぐ根本的な治療方法はない。プレドニゾロン内服がデュシャンヌ型の筋力維持に有効とされるが、効果は一時的にすぎない。リハビリテーションにより関節拘縮や廃用性萎縮の軽減を図る。起立や歩行訓練など、運動療法には種々の歩行用装具が用いられ、脊柱の変形予防や姿勢維持に体幹装具も用いられる。

 呼吸不全に対して、これまで気管切開がしばしば行われたが、鼻マスクを用いた経鼻間欠陽圧換気(NIPPV)をまず試みるべきである。肺活量が500m/以下、または動脈血の酸素、炭酸ガス分圧比が逆転した場合は、自覚症状が乏しくても人工換気の適応がある。 NIPPYは気管切開を要せず、管理が容易で施行中も会話が容易など利点が多いが、実施には医療側の経験と患者の理解協力が要求される。

 心不全に対しては、急性期には利尿剤や強心剤など一般の心不全治療に準じる。デュシェンヌ型の拡張型心筋症による慢性心不全には、カプトプリルなどのACE阻害剤が有効である。