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小児の腎不全:溶血性尿毒症症候群(HUS)やエルシニア感染症など

 腎不全とは、糸球体の機能が高度に低下し、体液平衡の維持が不可能な状態となり、代謝終末産物が体内に蓄積されるにいたった状態をいい、急性と慢性がある。急性腎不全は、早期に診断し、適切に治療すれば回復可能な場合が多い慢性腎不全では、腎機能の回復は一般に不可能であり、透析ないし移植が必要となる。

 急性腎不全は、以前は重症の胃腸炎などによる腎前性の腎不全が多く、死亡率も高かったが、輸液療法などの進歩により腎前性の頻度が減少してきている。わが国での小児の急性腎不全は、腸管出血性大腸菌などによる溶血性尿毒症症候群(HUS)と、エルシニア感染症や薬物による急性間質性腎炎によるものが大半を占めている。

 小児の慢性腎不全の原因疾患としては、糸球体腎炎(巣状分節性糸球体硬化症、紫斑癇性腎炎、急速進行l生腎炎など)が半数、腎低形成や尿路奇形などの先天性腎尿路疾患が3割を占めている。わが国における18歳未満の年間透析導入は、 100例前後と比較的少ない。

 

急性腎不全

 臨床症状としては、無尿、乏尿、浮腫、高血圧、嘔吐や傾眠などであるが、これらの症状がみられないことがしばしばある。乏尿性より非乏尿性の方がむしろ多く、注意を要する。高窒素血症、血清クレアチニン(Cr)高値がもっとも重要な検査所見である。ただし、小児の血清Cr値は年齢により正常値が異なっているので、それとの比較により判断する。

 腎不全の原因を早急に診断し、適切に対処することがもっとも重要である。まずは、腎前性、腎性、腎後性のいずれによる腎不全かを鑑別することが大切である(特に前2者の鑑別)。現病歴、既往歴からある程度の推測は可能である。一般検尿、尿浸透圧(比重)のほかに、尿化学の検査を行い、Na排泄率(FENa)や腎不全指数(RFI)などを計算すれば、この鑑別がほぼ可能となる。腹部エコーで腎のサイズや輝度をみることも重要である。

 腎前性が強く疑われれば、生理的食塩水などで輸液を行い、利尿と一般状態、腎機能の回復が得られれば、診断は確定する。ただ、腎性の場合は、これにより肺水腫の危険性があり、注意が必要である。保存的療法を続けても合併症(体液量過多、電解質異常、特に高カリウム血症、高血圧、痙攣、神経症状など)の管理が難しい場合、無尿や血清Crが急激に上昇した場合は、すみやかに透析療法を施行する。患者の病態や施設の力量に応じて、血液透析、腹膜透析のいずれかを選択する。


1)溶血性尿毒症症候群(HUS)

 消化器症状をともなう典型例の大半は、 0-157を代表とする腸管出血性大腸菌によって起こる。ペロ毒素が発症に重要な役割をもつ。治療は支持療法が中心である。適切な輸液・透析療法により、急性腎不全の治療はまず可能であるが、中枢神経症状、消化器穿孔などによる死亡はなお多く、これらの治療が今後の課題である。


2)エルシニア感染症にともなう腎不全

 エルシニア仮性結核感染症は、発熱、発疹、落屑、嘔吐や下痢など多彩な症状と合併症を有し、一部川崎病と診断できる症例も存在する。この多彩な臨床像と、本菌の産生するスーパー抗原活性を有する外毒素との関係が注目されている。急性間質性腎炎による急性腎不全を約10%に認めるが、予後は一般に良好である。


慢性腎不全

 慢性腎不全にいたった原因を検索する。尿路奇形にともなう腎盂腎炎がおもな原因であれば、抗生物質や手術などにより増悪因子の改善をはかる。SLEによる腎不全であれば、副腎皮質ステロイド剤のパルス療法などにより腎機能がある程度改善することがある。他の要因では、腎機能の完全な回復はまず不可能である。

 末期腎不全にいたれば、腹膜透析か、血液透析を施行する。ただし、小児の場合は、ドナーが得られれば腎移植をできるだけ指向したい。


 腎・泌尿器疾患

急性腎不全

O体液管理が重要である。毎日の水分出納(水分摂取量、尿量、不感蒸池量など)を計算し、体重測定も簡単で重要である。水分摂取過多による低Na血症が多いので、過剰輸液に注意する。

蛋白質はエネルギー量の6~10%に制限し、カリウムの多いものは避ける。ただし、急性期の異化亢進を避けるため、最低400 Cal/m2体表面積/日の工ネルギー摂取が必要である。

○高カリウム血症は生命にかかわる問題であり、不整脈や心電図の波形に注意する。

○悪心、嘔吐、食欲不振、貧血、痙攣、意識障害などの尿毒症症状に注意する。これらがみられれば、早期の透析が望ましい。

O体液過多の状態やHUSなどでは、高血圧を呈し得る。血圧が150/90mmHgのいずれかを超えれば、早期の治療が必要である。体液過多がないか、つねに注意する。

O回復期には、大量の利尿による水分・電解質バランスの失調に注意する。

慢性腎不全

○適切な食事療法を行い、血清Cr値が正常値の10倍程度になれば、透析を考慮する。小児では、最終的には腎移植が望ましい。

O腹膜透析は、乳幼児では第一選択の透析法であり、食事や生活制限も少ないが、腹膜炎の合併がもっとも重要な問題である。持続的自己管理腹膜透析(CAPD)力1主体であったが、最近では就寝中の機械による腹膜透析

 (APD)が主体となってきている。腹膜カテーテルの挿入は、できれば小児外科医に適確に入れてもらう。血圧が年齡相当に維持できるよう、適切なdry weight の設定が重要である。透析が長期になれば、腎注骨異栄養症がもっとも難しい問題のひとつとなるが、高リン血症を防ぐことがもっとも大切である。


○腹膜透析ではカテーテルの管理が、血液透析ではシャントの管理が重要である。

Oいずれにせよ、透析中以外はなるべく普通の生活が望ましい。患児を危険から守り、なるべく通常の生活が送れるように、本人・両親と、小児科医、 泌尿器科医、看護婦、ケースワーカー、学校の先生などの協力が非常に大切である。