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溶血性尿毒症症候群(HUS)


 原因が何であれ、破砕状赤血球をともなう溶血性貧血と、血小板減少および急性腎機能障害を呈する病態をいう。黄疸、血色素尿がみられる。下痢や血便が先行する典型例と、これをともなわない非典型例とがある。典型例としては、ペロ毒素(サル腎尿細管の培養細胞であるベロ(Vero)細胞の蛋白合成を障害し、細胞死を起こす菌体外毒素蛋白)を産生する大腸菌(VTEC)によるものが多い。大部分は、厳重な体液管理を行うと1~2週間の経過で軽快するが、一部に、中枢神経症状、心不全、消化管穿孔が急速に起こり致死的となる症例がある。再燃・再発を繰り返す症例もみられる。一般に、非典型例の方が重篤で遷延しやすく致死率も高い。急性期を脱しても、のちに慢性腎不全となってくる例がある。

 詳細な病態は不明である。以前は、「主として腎臓の血管内皮障害のために局所的DICのような病態となり、機械的な溶血と血小板の消費が起こる」とする説明が一般的であった。しかし、かなり早期に腎尿細管の障害、脳症が観察される例があること、 DICをともなわない例がみられること、比較的短期間で自然治癒傾向がみられるものが多いことから、「全身の細胞に何らかの異常をきたすが、各臓器の感受性の違いによって種々の症状を呈する」と考えておく方がよいだろう。


1……診断

 ぺ口毒素が検出された児は、尿潜血の有無を2週間前後追跡する。症状としては不機嫌、無欲様顔貌、貧血様結膜、浮腫、コーラ色の尿が特徴的。

 血液検査では、血液像で破砕状赤血球をともなう貧血(HblOg/d/以下)、血小板の減少(10万/μ/以下)と溶血性貧血による黄疸(総ビリルビン・AST〈GOT〉・LDHの上昇とハプトグロビンの低下)力1みられる。尿量の減少、BUN、クレアチニンの上昇(年齢別正常上限の1。5倍以上)は病初期には軽微なことがある。代謝性アシドーシス、電解質異常、低蛋白血症がみられる。 CRPが上昇していることがある。白血球の上昇は、感染よりも溶血の程度に相関するようである。


2……治療

 治療の根幹は厳重な水分・電解質管理であり、輸液や輸血の過量は避けなければならない。収縮期血圧が120~150mmHg以上の場合は、利尿剤・降圧剤を投与する。アシドーシスに対しては炭酸水素ナトリウムを投与する。DICの基準を満たすものにはDIC治療薬を使用する。

 貧血や血小板減少が数時間のうちに急速に進行することがあり、 Hb6。0g/dlを維持するように緩徐に輸血する。血小板輸血は2万/μ/前後でも出血傾向がなければ不要のことが多いが、外科処置(透析時など)の前には補充する。

 乏尿(250m//m2体表面積/日以下)・無尿、薬物治療に反応しないアシドーシス・高血圧・電解質異常などがあれば透析の適応となる。

 重症例では、腎不全に先行して中枢神経症状がみられ、抗痙攣剤・人工換気療法を含めた全身管理が必要となる。血漿交換療法を考慮する。心不全、消化管穿孔にも留意する。

 以前から、抗血小板剤、カンマグロブリン製剤、ハプトグロビン製剤、血漿輸注、血漿交換療法などが行われているが、その有用性が確定したものはない。 HUSの病態の詳細が解明されていないためと、自然治癒傾向を示すものが多いので、治療効果の解析が困難なためである。

 べ口毒素吸着剤の使用が認可される見通しであるが、主として腸内にある毒素を処理してHUSの発疱を抑えるのが目的であって、 HUSの病態そのものを改善するものではない。また、急性期を脱しか後の腎機能障害の緩やかな進行の有無についても長期の観察をする。

 

腎・泌尿器疾患

 病歴聴取のポイント

O過去1ヶ月間の嘔吐・腹痛・下痢などの消化器症状、便の性状。上気道炎症状の有無。

○不機嫌、無欲、不穏、傾眠などの意識障害の有無、痙攣の有無。

○尿回数、尿量、最終排尿時刻。

O最近の体重。

O身長を測定する(体表面積の算定に必要)。

観察のポイント

O時間尿量、尿の色、便の回数と量、便の性状。

○飲水量、経口摂取量・口渇の程度。

O体重・浮腫の程度。

○腹痛、腹壁の緊張度。

O咳嗽の有無、呼吸音。

○血圧(年齢別の正常値は14頁「こころとからだの発達」参照)。

O不機嫌、無欲、不穏、傾眠などの意識障害の有無、痙攣の有無。

O感染性腸炎が誘因となった症例では、2回以上の便培養で陰性が確認されるまで、汚物処理、手洗いを厳重に行う。