尿路感染症とは:アデノウィルス11による出血性膀胱炎

 尿路感染症には、尿道炎、膀胱炎、腎盂腎炎、腎膿瘍、腎周囲膿瘍などがあるが、主として入院加療の対象になるのは、上部尿路感染症といわれるあとの3疾患である。乳児期には男児に多く、それ以降は女児に多い。上行性感染が多いが、時に血行性感染がある(特に皮質部の腎膿瘍)。

 炎症が腎に波及すると、多少なりとも腎実質が壊死に陥り、ついには瘢痕化する。慢性反復性腎盂腎炎は慢性腎不全の主要原因の一つであり、これを防ぐには早期診断と充分な抗生剤投与が必要となる。また、乳児期早期は敗血症を併発しやすいので、さらに注意を要する。

 日常臨床では、腎盂内圧の上昇にともなう反射性の嘔吐や、消化管運動の亢進による腹痛・下痢といった消化器症状が前面に出ることもまれではなく、また、膿尿や細菌尿は経口の抗生物質投与でも消失することがあるため、症状の乏しい発熱=不明熱として入院することがある。

 また、膀胱尿管逆流、重複尿管、水腎症などの泌尿器科的な対応が必要な尿路奇形がみつかる頻度も高く、炎症が治まったのちにはその評価を行う。感染を繰り返すことばかりでなく、尿の逆流によって腎が高い圧にさらされること自体が腎実質障害をきたすと考えられているので、手術適応を検討しながら長期に定期的な観察を行う。

 出血性膀胱炎は、大腸菌によるほかに、夏期にはアデノウイルス11によっても起こる。凝血塊による尿道閉塞を避けるために、入院して輸液を行うことがある。

 

1……診断

1)症状

 年長児の上部尿路感染症では、悪寒・高熱と腰背部の叩打痛を認めることが多いが、頻尿・残尿感・排尿時痛といった膀胱刺激症状や、腹痛・嘔吐・下痢などの消化管症状をともなうこともある。膀胱炎では、膀胱刺激症状を通常認めるが、それまでなかった夜尿が唯一の症状のこともある。乳幼児の尿路感染症では、突然の高熱、不機嫌、嘔吐・下痢のような非特異的な症状のみのことが多く、敗血症を思わせるような顔色・皮膚色のくすみがみられたり、髄膜刺激症状を認めることもある。

2)尿検体の採取

 病巣のはっきりしない発熱がみられる児は、検尿・尿培養を行う。外陰部を洗浄(包茎の男児では傷つけないように包皮を飜転する)したのちの中間尿を用いる。採尿パップを用いる場合は、貼付後30分以上経過したら洗浄をやり直す必要がある。このようにしても尿道尿道口周囲の分泌物が混じることが多いため、カテーテルを挿入して尿を採取することもある。

3)尿培養結果の判定

 外陰部などからの紛れ混み菌と病原菌とを区別するために定量培養を行う。通常は、10ソm/以上の菌体を認めた場合を陽性とする。すでに抗生剤を内服している場合や、頻尿や輸液のために希釈された場合、また、低比重尿のために溶菌したと思われる場合には、これより少なくても有意と考える。逆に、複数の菌が分離された場合や、基礎疾患がない児で分離頻度がまれな菌が検出された場合には、“紛れ混み”を疑う。

4)検尿所見

 膿尿をともなうことが多いが、受診までに抗生剤が投与されている場合には膿尿がなくても尿路感染症を否定できない。逆に、外陰部炎や川崎病や薬剤性・ウイルス性の間質性腎炎などでも膿尿がみられることがある。複雑性尿路感染症(尿路奇形をともなったもの)では、抗生物質の静注による治療を行っても膿尿の消失に日数を要する傾向がある。蛋白尿や血尿のほかに、細菌や白血球の酵素によって尿潜血反応が陽性となることもある。

 感染が腎実腎におよぶと、 CRPや赤沈など血液炎症反応が強陽性になる。

5)画像診断

 ①腹部超音波検査水腎症・膿瘍形成の有無、腎腫大・腎エコー輝度を評価する。これらについてCTで評価することもある。
 ②DMSAシンチグラム:尿検査で診断が困難な場合に、炎症による欠損像の有無により診断したり、その後の瘢痕の程度を評価する。
 ③IVP : 尿路系全体の形態、排泄動態を把握できる。
 ④逆向性膀胱造影:IVPでははっきりしないような逆流性病変がわかる。

2……治療

 一般状態が安定し、赤沈が正常化傾向となるまでぱ静注で抗生物質を投与する。抗生物腎を経口投与に変更したのちも、形態的な評価が終わるまで治療を継続する。乳児期の膀胱尿管逆流は自然治癒傾向があるので、長期予防投与を行いつつ、泌尿器科医とともに観察を行う。

 腎膿瘍一腎周囲膿瘍の場合にはドレナージや腎摘出が必要なこともある。

腎・泌尿器疾患

入院時の病歴聴取のポイント

O症状経過、おむつ、下着の汚れの有無、排尿を我慢する方かどうか。

O原因のはっきりしない、あるいは呼吸器症状に乏しい発熱を繰り返していないか。

O尿路系形態異常や尿路感染症の家族歴の有無。

 

採尿時のポイント

○外陰部洗浄は充分かどうか。

○外陰部炎の有無。

観察のポイント

○尿量の減少の有無。

敗血症などを併発したような一般状態の変化はないかどうか。