決められた通り飲まないと、どうなる?

繰り返しの投与は、薬が蓄積する

 「熱がでた?」

 そして、あわてて、病院にかけこんだ経験をお持ちの人も多いと思います。

 そんな時、解熱薬などは、1回か2回飲めば目的を達成できます。

 しかし、慢性疾患、生活習慣病と言われる病気は、数力月あるいは数年にわたって薬剤を飲まなければなりません。その間に、腎臓障害などの他の病気が併発したり、数種類の薬剤を飲むと、体内に薬が蓄積する、ということも考えなければなりません。

 体内に残った薬の成分が蓄積したらそれは大変です。

 心内膜炎という病気にかかった人だと、1日量として30錠近い薬剤の処方を受けるヶ1スもあります。これだけの量を毎日飲んでいるとどうなるでしょうか。飲んだ薬のすべてが代謝、排泄されていればよいのですが、大量に蓄積されていたとしたら、大変なことになりそうです。

 では、次に体内への薬の蓄積という現象について、詳しく説明しましょう。

 薬剤に含まれている主成分の薬は、降圧薬であれ、高脂血症薬であれ、ほとんどすべてが化学物質でできています。

 たとえば、ある病気の治療で、朝の6時に薬剤を飲みはしめたとします。

 薬剤を飲んだ後、薬は吸収されて循環血液中に入り、循環血液中の薬の濃度が上がります。約1時間後の午前7時頃、最高値に到達します。つまり、まずこのあたりで効果がでます。

 その後、循環血液中から薬は徐々に減っていきます。

 次に、第2回目の薬剤を昼の12時に飲んだとします。

 この場合も1回目と同じように、2回目の投与によって、午後1時頃に循環血液中の薬の濃度が最高値になります。その後、循環血液中の薬の濃度は徐々に減ります。

 朝の6時に薬剤を飲んだ後で循環血液中に残っている薬の濃度と、昼の12時に2回目の薬剤を飲んだ後の循環血液中の薬の濃度とは区別できないので、午後の循環血液中の薬の濃度は、朝昼の2回飲んだ、循環血液中の薬の濃度を足した濃度になります。

 そして、3回目を午後の6時に飲んだとします。そうすると、午後6時以降の循環血液中の薬の濃度は、朝の6時に飲んで循環血液中に残っている薬の濃度と、昼の12時に飲んで循環血液中に残っている薬の濃度、夕方6時の3回目に飲んで循環血液中に入ってきた薬の濃度を足した濃度になります。

 このように、4回、5回と薬剤を飲んでいくと、1回、2回、3回、4回、5回目に飲んだ薬剤が循環血液中に残っている薬の濃度の総和に、6回目に薬剤を飲んだ循環血液中の薬の濃度が加わってくることになります。あまり頻繁に薬剤を飲んでいると、体内に薬がとどまって蓄積されていくことになります。

 しかし、体内に薬がずっとそのまま蓄積していくか? というと、そうではありません。

 何度も説明しているように、体内に入った薬は、細胞にとっては異物です。体はこれを一刻も早く処理しようとします。体内に薬が入ってくる速さと、体が薬を取り除こうとする速さとのバランスにより、体内に薬が蓄積する量が決まります。

 両者がちょうど釣り合ったところで、循環血液中の薬の濃度は、絶えず、ある一定の幅で上下するようになります。

 この状態を「定常状態」と言います。体の薬の処理能力を表すのが薬の半減期です。薬の蓄積の程度と薬の半減期との間には、重要な公式が存在します。

 すなわち、薬剤を飲む間隔を、その薬の半減期と同じ値になるようにして、薬剤を繰り返し飲んでいくと、定常状態の循環血液中の薬の濃度は、最初に薬剤を飲んだ後に得られる循環血液中の薬の濃度のちょうど2倍になります。蓄積率は、2となります。

 薬の蓄積率と投与間隔との関係は、次のようになります。

 「薬の半減期よりも短い投与間隔で薬剤を飲むと、危ない!」ということがわかります。医師が患者さんに薬剤を処方する時は、以上のようなことに配慮して薬剤を決めています。

 この話に興味をお持ちの人は、次のシミュレーション図を見てください。

 めんどくさいとお思いの人は、飛ばして結構です。

 通常、医師は、薬剤の投与間隔をその薬の半減期とほぼ同じ値になるように考えて処方しています。また、薬剤の投与量も、定常状態の循環血液中の薬の濃度が、治療濃度の範囲内に入るように決められています。

 投与間隔を、薬の半減期の半分にして頻繁に薬剤を飲むと、繰り返し投与で循環血液中の薬の濃度の蓄積は大きくなり、副作用などの危険があります。逆に、投与間隔を薬の半減期の2倍にし、ずぼらに飲むと、循環血液中の薬の濃度は蓄積しません。しかし、治療濃度範囲内に入らず、効き目がありません。

 このように、薬剤の投与間隔は、その薬の半減期の値に基づいて決められています。では、薬剤の投与量を変えると、どうなるでしょうか?

 薬剤の投与量を上げると、それに比例して循環血液中の薬の濃度が上昇します。薬剤の投与量を下げると、それに比例して、循環血液中の薬の濃度は下がります。

『薬の聞く人、効かない人』高田寛治著より