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 基礎的研究

 

 

 聴覚医学の進歩には、中耳、内耳、さらにその中枢の聴覚系にたいする形態学、そして基礎生理学が貢献した。これら基礎的研究の進歩が、臨床の聴覚医学の進歩と並行しておこっていたのである。

 

 電子顕微鏡には二種類、透過型電子顕微鏡(透過電顕)と走査型電子顕微鏡(走査電顕)とがあることをご存じと思う(図4は二種の電子顕微鏡写真の例である)。透過電顯は光学顕微鏡の場含と同じく、しかし、ごくごく薄く切った組織を、光でなく電子の流れで大きく拡大して眺めるもの。走査電顕は、組織を切らずに細胞などを外から眺めるもので、「走査」(円習己品)という言葉が用いられている。内耳には感覚細胞をはじめ、いろいろな細胞が特徴ある配列をしている。走査電顕のおかげて、それらの細胞の形と配列、つながりなどが十分によく理解できるようになった。また、病的変化、たとえば感覚細胞が大きな騒音によって形が変化することも、手にとるように眺めることができる。

 

 聴覚生理学の進歩には、超微細電極(マイク气≒ヘット)とコンピュータを含む電子機器

を用いた神経生理学が貢献した。これにより聴覚の中枢経路、中枢各部位の役割などが明ら

かになった。

 

 また、内耳の蝸牛と密接な関係にある三半規管と耳石器に発する「前庭平衡系」の生理・解剖学の進歩も並行しておこり、内耳の平衡機能に関係する各部分と、その中枢に対応する「形態と機能」が明らかになった。これら神経生理学上の進歩は、古い耳鼻咽喉科に「神経」をつけ加え、新しい領域「神経耳鼻咽喉科学厂が誕生することになった。聴覚・音声・言語・平衡機能に関する神経学領域が、耳鼻咽喉科学とその診療につけ加わることになったのである。