人工中耳と人工内耳

 

 

 他方で、全植え込み型人工中耳を待つ声は大きい。全植え込み型人工中耳に必要な充電式電池は近年著しく進歩した。全植え込み型ではマイクロホンの植え込みも必要である。これについて、われわれは動物実験で実用性をたしかめているが、ヒトでの臨床経験はない。この人工中耳の将来性には世界各国が注目し、世界中で実験が進められているので、全植え込み型人工中耳の間発も遠いことではないと思かねていた。

 

 はたして近年、ドイツやアメリカなどで何社もが、半植え込み型と全植え込み型の人工中耳を開発し、適応症を感音性難聴にまで拡大してきた。まずアメリカのシンフォニックス社が一九九八年に半植え込み型人工中耳の製品化に成功。電磁式駆動を用いている。一九九九年にドイツのインプレックス社が、わが国の人工中耳と同じくピエゾ振動子を利用し、全植え込み型を製品化した。

 

 わが国で間発した半植え込み型人工中耳は、現在、高度先進医療としていくつかの大学病院で症例を選び、ゆっくりではあるが実績を重ねている。こじれた慢性中耳炎に用いられることが多い。千術だけでは聴力改善が十分に得られないと思われる症例に適用されている。

 

 人工中耳の植え込み千術には、多少の技術上の熟練を必要とするのが難点ともいえる。しかし、人工中耳植え込みが適当かどうかは、あらかじめ検査をいくつかおこたって十分にわかる。植え込みが適応のある患者さんになされると、人工中耳は大変有用なようである。植え込みが成功したある患者さんによると、よい音質の、雑音の少ない人工中耳を通して、鳥のさえずりを楽しんでいるとのことである。

 

 わが国の人工中耳に、内耳への音の伝達にピエゾ式を採用したことは、音質がよく、雑音が少ない点て成功であった。これについて私どもは間違っていなかったと顧みている。