強カネオミノファーゲンシー(SNMC)の肝炎に対する効果

 

 実験的肝障害を除いて,ヒトの肝疾患の場合に肝細胞の変性・壊死,言い換えるとALTやASTの上昇なくして肝病変の進展はない.

 

 このことは実に当然のことでありながら,かつてはALTの上昇なくして肝硬変へ進展すると言われた時期があった.これは検査問隔が不適切であったこと,知られた時には肝硬変になっていたこと,などが推測される.

 

 このことは明確にALTが低値であればC型肝炎では肝発癌が少ないことを多羅尾ら1)は自然経過例で,強カネオミノファーゲンシー投与例で熊田ら2)が,また,インターフェロン投与例で筆者3)が示した.インターフェロンの場合にはウイルス排除が可能であるが,肝発癌抑制ということからすればウイルスの排除とはかかわりなく, ALTが低値であればよいという成績であった.

 

 このように,C型肝炎の治療の最終目的である肝細胞癌の発生を抑えるという観点からすれば,ALTをいかに低値に維持し,肝病変の進展を抑えるかが重要である.

 

 近年のウイルス排除だけに目を奪われている現状から,疾患そのものに目を向けた治療,対症療法の重要性を再認識すべきであろう.

 

 山本4)はSNMCを肝炎に効果があると, ALT, ASTがない時代に,改善から報告した.その後, ALTやASTが臨床の場に登場し,SNMCがこれら血清酵素を改善させるといわれるようになった.

 

 1977年,鈴木ら5は二重盲検試験によりSNMCが慢性肝炎例で明らかにAST,ALTを低下させることを示した.この比較試験の意義はSNMC力ヾAST,ALTを下げるということを示したということのみならず,対症療法薬の場合の二重盲検試験の重要さを示したことにある.placeboでも投与開始後にALT(GPT)およびAST(GOT)の低下がみられる.しかし,この低下はSNMCのそれとは明らかに異なっている. placeboでのALTの低下は安静による効果とも言われているが,むしろ,自然経過での下りと考えた方がよいと思う.その理由は慢性肝炎の場合, ALTが上がればその後に低下がある.薬物の使用動機は病状の悪化であり,悪化の時点から使用を始めたために下降したものと考えた方がよいように思われる.

 

 しかし,この結果は当時, AST ・ ALT の低下と肝細胞の変性・壊死の密接な関係が十分に認識されておらず,単に外見上■AST・ALTを改善させるだけで肝の炎症は改善させていないのではないかと言われた.そこで行われたのが日野ら6)によるSNMCの肝組織所見改善を確認したSNMC 100 ml の投与試験である.これによってSNMCが肝での炎症を明確に抑制することが示された.

 

 SNMCの作用については免疫調整作川,抗ウイルス作用などこれまで多くのことが言われてきたが,慢性肝疾患でAST・ALTを低下させ,肝の炎症を抑えるごとに直接結びつくようなデータは示されていない.C型肝炎ウイルスHCV)感染肝細胞の殺傷にかかかる宿主の免疫応答のどの段階かを阻止していると考えられるがそれがどこか不明である.C型慢性肝炎にSNMCを投与し, ALT力づ氏下しても血中HCV RNA量はむしろ増加することがあり(病態には何らかかわりがないが), SNMC力がHCVに対して抗ウイルス効果を示し,肝炎を抑えているとは考えられない.