読者です 読者をやめる 読者になる 読者になる

BCAによる体蛋白保全作用

 このFischer輸液の応用中、肝臓障害患者(肝硬変、大手術、敗血症など重症ストレス)の蛋白代謝が改善されることが注目されてきた。臨床的にも血液蛋白質の増加やアルブミン合成が増加する報告が出てきた。このようなストレス状態では体蛋白の分解が亢進しそのアミノ酸で急性期応答(炎症蛋白合成や糖新生)をまかなおうとする。実験的にも横隔膜を用いてBCA添加が蛋白合成を促進し、分解を抑制することが見いだされた。ことにロイシンにこの作用が強く、分解はロイシンのケト酸でも効果があるという。もしこれが真実ならばロイシンのケト酸の輸液がアンモニア毒性が懸念される肝臓障害にはより有効と考えられ、その開発を目指すべきであろう。

 

 この効果の機構についてはまだ良く分かっていない。インビトロ実験では明瞭な効果が示されるがインビボでは効果は不明瞭である。まず合成促進の機構として蛋白合成のelongation factor (EF)をロイシンが活性化するという説がある。名取はBCAはポリソームのmRNA量を増加させるという。これはBCAが機能的mRNAを安定化しているとも考えられる。一般に制限アミノ酸を添加すれば蛋白合成はポリソーム形成を伴い促進されるが、 BCAカミ前述のようなストレス状態では減少して制限アミノ酸になる可能性もある。

 

 次に蛋白分解の抑制としてMortimoreらは肝臓灌流実験からロイシンには蛋自分解抑制効果のあることを認めている。ただし筋肉では比較的ロイシン特異的であるが肝臓ではロイシンを含む数種のアミノ酸混合液が最も効果がある。この機構として彼らは蛋白のリソソームでの分解過程(オートファジイ形成)がある種のアミノ酸で抑制されるからであると考えている。しかしロイシンの構造類似物質(イソ吉草酸カルニチン)でも抑制効果があり、前述のごとく口イシンのケト酸でも有効なことを支持する。また作用点も細胞膜と考えられ350 KD の受容体も同定されつつある(門脇)。一般に細胞はアミノ酸欠乏状態になると自己保存のため細胞内蛋白をリソソームに取り込み分解して生じたアミノ酸を再利用しようとする。このためオートファジイが発達する。この過程にロイシンを含む数種のアミノ酸が抑制的に働くと考えられる。細胞内顆粒による物質輪送の分子機構は現在遺伝子レベルで解析されつつあり、この領域が明確になればロイシンの抑制機構なども解明されると思われる(木南)。なおロイシンの蛋白代謝への影響はインスリン効果に似ている。実際ロイシンにはインスリン分泌促進作用があるからインビボではこの機構も関係している可能性もある。しかしインビトロでのロイシン作用はインスリンでは説明できない。またこれらアミノ酸(特にグルタミン)が細胞の膨潤を促進して種々の代謝に影響を与えるともいかれている(Heussinger)。いずれにしてもBCA輸液がストレス状態患者の蛋白分解を抑制し、肝臓の蛋白合成を促進すれば体蛋白の消費を節約して急性期症状改善に有効であろう。