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肝不全用経腸栄養剤の効果と問題点

 

 肝不全用経腸栄養剤の間題点の一つとして、従来より服薬コンプライアンスの間題点が指摘されている。各施設で、常用投与量の服薬が行われているか否か服薬状況は明らかでなく、教室における服薬状況を検討した。

 

 肝不全用経腸栄養剤服薬中の外来症例45例(男性19例、女性26例、平均年齢58歳)の1日平均の服薬量は常用量の50~75%で、常用投与量を服用している症例は18例(40%)であった。投与期間とコンプライアンスとの関係を検討すると、服薬後半年以降の症例では約半数が不良であった。服薬コンプライアンス低下の理由としては、副作用(腹部膨満感、下痢嘔吐) 16%、症状改善のため18‰病態悪化(肝不全肝細胞癌の進行) 16%であった。発現した副作用に継続可能な軽度のものであるが、非代償性肝硬変症例ではこのような軽度の症状でも食事摂取が不良になる場合があり、服薬中止を余儀なくされることがある。また、病態悪化による中断はいたしかたない場合が多い。しかしながら症状改善のため中止した症例では、中止後3ヵ月から半年の間に低蛋白血症が再び出現し、腹水、浮腫の症状のため再入院が必要となる症例がみられる。肝不全用経腸栄養剤服用が必要な症例では、症状の改善をみても服薬を自己判断で中止することのないような服薬指導が重要である。

 

 肝不全用経腸栄養剤の栄養学的効果を、経時的に投与開始後12ヵ月目まで、肝硬変の重症度別に検討した。血清アルブミン値は、 grade B では服用後より漸次上昇し、 0。2 g/d/程度の増加を示したが、 grade C では上昇傾向はみられなかった。また、ヘモグロビン値もgrade B では漸増傾向を示す。従来より、分岐鎖アミノ酸製剤の効果を左右する因子として肝細胞機能障害の程度加重要であることを指摘7)しているが、今回の成績も同様であった。したがって、肝不全用経腸栄養斉Uの投与開始のタイミングを逸することのないよう肝の病態を適切に把握する必要がある。

 

 肝不全用経腸栄養剤の効果は必ずしも常用量の服用でなくても、血清アルブミンやヘモグロビン濃度の上昇傾向がみられると考えられるが、その効果は緩やかであった。臨床効果を左右する因子として服薬量、肝の重症度があるが、それ以外にも自然経過に伴う肝の重症炭の進展や、肝細胞癌の発症とそれに対する治療の影響などの要因も考えられる。肝不全用経腸栄養剤の服薬期間が牛年以上の症例(26例)で肝の重症度の変化を検討すると、重症度がgrade Bを維持する症例は65%であった。一方、 grade Bからgrade C に増悪した症例も32%に認められ、 grade C に進行した症例では十分な栄養学的効果を得ることは困難であると考えられる。

 

 肝不全用経腸栄養剤は蛋白不耐症の症例にも安全にアミノ酸を投与でき、バランス良く栄養素を補充しつつ、血清アルブミンを含む栄養状態の改善が期待できる。しかしながら、投与開始にあたっては、重症度を含む病態の杷握が必要であり、また服薬コンプライアンスを維持するために、服薬問始時に十分な服薬指導が重要と考えられる。