肝線維化におけるサイトカイン研究の進歩

 

 肝線維化のマトリックス代謝に関与すると考えられるサイトカインを示した。サイトカインの中で最も線維化に重要なのがTGF-βである。四塩化炭素による急性肝障害においては、正常肝で検出できなかったTGF-βmRNAが肝細胞および非上皮性細胞に強く発現していた(Armendariz-Borundaら、 1990)。最も強い発現は、非上皮性細胞で48時間後、正常肝の5倍であった。慢性投与では、2~3週で、非上皮性細胞に強い発現が見られた。ここからもin vivoでは、肝細胞より主役は伊東細胞をはじめとする間葉系細胞がマトリックス産生担当細胞であることが認識された。培養伊東細胞にTGFβ1を添加すると、全体のコラーゲン産生量は3倍以上に増加する。一方、 TNFα(tumor necrosis factor α)はこれを全く増加させない。 Dex-amethasoneの添加は、I型プロコラーゲンmRNAおよびTGFβ1 mR-NAの発現を2分の1に抑制している。このように培養伊東細胞は線維芽細胞様に変化しており、伊東細胞の肝線維化におけるコラーゲン産生担当細胞としての意義があらわれる。またMatsuokaら(1993)はTGFβ1の産生細胞がKupffer細胞であり、このTGFβ1により伊東細胞によるコラーゲン産生の増加がみられることを報告している。 Inagakiらは、I型コラーゲンα2鎖の遺伝子転写に必須なプロモーター領域を同定し、同領域がTGFβによる転写惺進に重要であることを示した。 さらにInagakiらは、四塩化炭素の慢性投与により作製した一匹のラットから伊東細胞を単離し、2つの継代培養可能なクローン(CFSC-2G、 CFSC-5H)をすでに確立しており、これを用いてI型コラーゲンa2鎖のプロモーターのTGFβの感受性を検討している。CFSC-2Gは、正常肝から単離した伊東細胞と変わらず、 TGFβのparacrine作用を受けていた。一方、 CFSC-5Hはmyofibroblastsと形質発現を同じくし、 TGFβのautocrine作用を示していた气今回のシンポジウムで稲垣らは、このプロモーター領域を組み込んだトランスジェニック・マウスを作製し、急性および慢性肝障害におけるこのプロモーターの活性化を明らかにした。その結果の一つは、正常肝由来の非実質細胞に比し、線維肝から分離した非実質細胞分画におけるI型コラーゲンα2鎖の遺伝子およびプロモーターに結合させた大腸菌のLacZ遺伝子の発現はそれぞれ3倍、17倍亢進していた。正常肝由来の伊東細胞をTGFβで刺激するとこれらの遺伝子発現は増加したが、線維肝由来の伊東細胞では刺激前から高値を示し、 TGFβ刺激による増強はみられなかったという。この結果は、内因性のTGFβに感受性がある高められた状態になると、どんどん進行性にマトリックス産生がなされる慢性肝障害のselfperpetuationを説明する良いモデルとしてこのトランスジェニック・マウスがあると考えられた。